2014年11月23日日曜日

楽器製作ファミリー Hammig家のカール

ドイツ、ドレスデンで1934年に製作されたバイオリンを手に入れました。
製作者はCarl Heinrich Hammig(1877-1945)。

Hammigファミリーは代々楽器製作で有名で、現在は高級ピッコロやフルートなどが知られています。
John Dilworthというバイオリン製作家で研究者の著書によれば、ファミリーは18世紀末には、Saxon Vogtlandという地で高品質の楽器作りをしていたといいます。200年の伝統を持つ同ファミリーは、音楽と音楽家を深く理解し、楽器製作、修理メンテナンスを今日まで続けています。

さてバイオリン製作を見ていきますと、、同ファミリーの先祖は、1600年代半ばにSaxonに移住し、そのうち一部のファミリーが、1700年ころにバイオリン製作と販売を行うようになったのが始まりだそうです。

Carlのお父さんはGustav Adolf Hammig(1858-1947)。ドイツのバイオリン製作のメッカともいうべきMarkneukirchen (豊かな材料原産地)で、コントラバスなどを作っていましたが、彼の仕事は平凡だったようです。しかし、息子のCarlのほうはすぐれたバイオリン製作者だったらしく、その評価の記述が資料に見られます。著名なバイオリン工房Lippold Hammig社のオーナー代表として、バイオリン製作を行っていたようですが、その取引数は少なく、ドレスデンの企業歴史資料によると、ある年の取り扱い数は34本とありました。

1934年のドイツはナチスが台頭し権力を掌握した年です。
これまでドイツのバイオリンは大量に製作され、1800年代~1900年代初頭まで、主にアメリカに輸出されていましたが、度重なる大戦やナチスの台頭で、輸出はなくなり、当時のドイツのバイオリン製作者は国内向けという小さな市場に向けて職人技を駆使した作品を送り出していたようです。

Hammigファミリーの初期のバイオリン製作は、ストラディバリウスが活躍した時代と重なりますが、このファミリーの特色は、裏板を一枚板で作ること、そしてさまざまな工夫を凝らして、実験的なバイオリンを製作したところにある、とのことです。(新宿の某高級バイオリン店のご主人も、「職人はそれぞれのこだわりで色々な作り方をする」と話していました。(ここでさりげなく手にしたイタリア製のオールドが1800万円。見た目で違いは全く分かりませんでした。)

私のCarl Hammigは傷が多く、C部分の一部が焼け焦げたようになっていて、第二次大戦の連合軍によるドレスデン大空襲を生き延びたのでは、と想像をかきたてます。が、ニスの剥げ、無数の細かい傷にもかかわらず、虎の杢目模様は美しく、その音色と響きに心奪われます。これまでに手に入れたどのバイオリンよりも素直に弓を受け止めてくれるような感覚があります。

明日は、このバイオリンの最初のステージです。
あがり症の自分は、この楽器とひとつになれるでしょうか。