2013年11月26日火曜日

名古屋鈴木バイオリン No.13

半年以上前に、7つ目となるフィドル、Nagoya Suzuki No.13と出会いました。

No.13はケースも部品もはがれ、裸の哀れな身一つでジャンク品の山のてっぺんに寝そべっていました。樹の温もりと手塗ニスの光沢が放つ不思議なオーラに誘われたのでしょうか、手が伸びてしまいました。

家にストックしたバイオリン部品をあてがい、チューニングすれば使えそうです。
一体どんな音を出すのか聞いてみたくなり、No.13を持ち帰りました。

あちこち測り、他のフィドルと比べてみました。
少々弦長が長め設定(指板ネック側からf字孔の中心というか、コマまでの距離が、他のフィドルよりも3mmくらい長い)のフィドルです。弾いてみると、弓と弦の当たりが快適で、とても弾きやすいのに驚きました。ラベル紙は黄変しているものの、表示はクリアで、製作年はありません。ボディは古いものの、傷はほとんど見られません。

弾いているうちに、名状しがたい一体感を感じる時がありました。

今ではこのフィドルが愛器になり、運命の出会いと信じた虎杢の美品フィドルはお蔵に。
不思議なものです。このフィドルを愛用するようになってから、人前で演奏するのに抵抗がなくなってきたようです。

なりゆきで、今月は地域社会福祉の団体さん主催の恒例コンサートにお招きを受け、
このフィドルを抱えて、ストリングス・カルテットを組み(Guitar, Mandolin, Mandola, Fiddle)、参加しました。
100名以上のお客さんの前でやるのはこんなにも緊張するのだ…と知りました。

無事に終わって胸をなでおろしていると、カルテット仲間から次のお誘いが来ました(∩;^^)

2013年7月14日日曜日

ループ・ステーションとフィドル用ピックアップ

複数のフィドルで行う即興合奏は、一度その快感を体験すると、やみつきになります。
しかし、仲間が多忙な仕事の合間をぬって集まれる時間は多くありません。

そんなとき、一人合奏を可能にしてくれる、優れものを見つけました。
ループ・ステーションです。

初めてループステーションを見たのは、Youtubeでした。、
それ以来、このエフェクターに魅入られ、リサイクル店やネットで探し、
ついに手に入れたのが、Boss RC-50 Loop Stationです。
エレキベースで試してみると、録音したフレーズが停止と同時に演奏開始になり、
すぐさま合奏が可能です。次々に多重録音すれば、一人オーケストラです。
すっかり夢中になってしまいました。
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フィドルの音をどう入力するかが問題でした。
自作のフィドル用マイクは、カシオのボーカル用ダイナミックマイクをアレンジしたもので、
音質音量ともにいまいち。販売されているフィドル用マイクはコンデンサーマイク、
価格も万単位です。これも選択外。

今回は思い切って、ピエゾピックアップを試してみることにしました。
これまでマイク派だったのですが、マイクだと周囲の音も拾いますし、ハウリングを考慮すれば出せる音量にも限界があります。
その点、音を振動で拾うピックアップはそうした心配がありません。
そして、ピックアップが拾う音をスピーカから聞いて、生の音と比較して見たかったのです。

使ってみた人のレビューを頼りに、コストパフォーマンスに優れたピエゾピックアップ、
Artec A1-OSJを購入。
本体が届いて見るとびっくりです。写真で想像していた大きさの3倍はあり、接着剤ではりつける簡素なものでした。「う~む…購入者レビューにあった”存在感あり”とはこれだったのか…」

しかし。
使ってみると、音をよく拾ってくれ、音質も悪くありません。これは期待以上でした。
こうなると、エフェクタを通して、もっと好みの音にできないかしら…と、もともとなかった期待が
今や膨らむばかりになってきました。

2013年5月3日金曜日

フィドル音比べ会/Sally Gardens

昼過ぎにカフェのマスターからメールがきました。
フィドル名人が見えて、新参フィドルの音比べやっているから、おいでよ、とのメッセージ。

仕事途中で、私も最近リサイクル屋さんで見つけた掘り出し物を持って馳せ参じました。

名人が預かってきたフィドルは、ナッシュビルで入手したという100歳以上のフィドル。
日本の工房で亀裂や欠けた部分を修理したものだそうで修理代が膨大だったとか。

少しフラットで赤いニス色です。非常に大きな音を出すすぐれもので、垂涎ものです。
木地はといえば:
う~む、これがスプルースとメープルか…?と疑いたくなるような木地です。
ためつすがめつ、隅々を点検…しかし、音は確かにいい…

私のフィドルも名人に弾いていただきました。
濃い虎皮模様のくっきり杢目、厚めの頑丈そうなスプルース。名人が弾きます。
このフィドル、新しくて弾きこんでいないせいか、まだ音は小さいとか。
しかし、低音高音が濁り無くよく出ていて、かなりの高級品とのコメント。(*≧∀≦*)

よかった…(●´ω`●) もうリサイクル屋さん巡りは卒業です。(祝´∀`)ノ.+
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名人から色々な曲を耳コピで教わりました。
中でもSally Gardensはとても素敵な曲です。

3台のフィドルで弾くと、不思議とうまい具合に役割分担ができます。
主旋律、リズム、ベース(コード)と。
例によって、即興で役回りを適当に替えて、何度も繰り返します。

不思議ですね。これが飽きることなく、同じ曲なのに同じ弾き方の繰り返しはほとんどなく、
新しいバージョンで入れていくのです。(理屈では説明できませんが、体がそう動く、としか…)

楽譜に忠実に練習していたバンドの時とはまるきり違い、少しのルールを
ハモリとリズムに適用して、心に湧いてくる音楽を即興で奏でています。
ぴったりと合いそのままエンディングまで、呼吸が合うと、その快感といったら、
気持ち( ´∀`)いい~♬ のひとことにつきます。

今宵もまた、あっという間に時間が過ぎ、気づけば夜中近く。
明日、名人は早朝勤務とか。一同解散。

私は明日が締切。\(*'▽'*)♪/

2013年4月1日月曜日

Gibson:戦時中工場を支えた女性たち

第2次大戦中に女性たちが作ったGibsonギター。「優秀な品はギブソン製品のみ」という期間限定バナーが見える。
第二次世界大戦中、男性たちが戦地に赴きました。そして、働き手を失った職場には、女性たちが進出し、その仕事を担いました。これは全米で起こった現象で、戦後の女性の社会進出に大きな拍車をかけた出来事です。Gibsonの工房もそのひとつ。
詳しくは、近刊書『Kalamazoo Gals』
 
◆VOA記事から:(和訳)
 
ギブソンギターの過去の女性たち
The Women of Gibson Guitars' Past

第二次世界大戦中、戦地に赴き職場を去ったアメリカの男性たちにかわり、女性たちが残された仕事場の穴を埋めた。女性たちは工場、店、造船所で働いた。その中に、ギブソンギターを作る仕事をした女性たちがいた。
今日は、この話を少し詳しく紹介しよう。

作家ジョン・トーマスはギターの愛好家だ。ミシガン州にあるギブソンギター工房の戦時写真を見ていて、彼は驚いた。写真に写っていた75名ほぼ全員が女性だったのだ。
現在90歳のアイリーン・スターンズさんは戦時中、数年間この工場で働いたことがある。
 
「高校を出てみんな職探しをするけど、仕事がなかったの。するとある日、声をかけられてギブソンで働き始めたのよ。それって、戦争のせいね。」
 
ジョン・トーマスがミシガン州カラマズー郡で探し出した、旧ギブソン工房の労働者たち。その一人がスターンズさんだ。彼女は、1940年代に同工房が生産した数千本のギター用に絃を作っていた。
 
「有名人やギターを求める人たちがよく来たわ。彼らは壁の向こう側にいて、私はこちらで絃を製造してた。絃作りは本当にいい仕事だったわよ。だって、彼らが美しい楽器を全部奏でるのが聞こえてきたんだもの。」
 
ジョン・トーマスはギブソン工房で働く女性たちを「カラマズー・ギャル」と名づけて呼ぶ。この呼び名は、女性ギター職人たちについて書いた彼の新刊書のタイトルでもある。女性が働いた事実をギブソン社は秘密にしてきたものと、彼は考えている。理由は、女性が組み立てた楽器では、売れないし使ってもらえないのでは、と会社が思っていたと考えられるせいだ。
 
執筆のため、トーマス氏は、大戦中作られたギブソンギターを3本買い集め、数本を借用した。すると友人がローレン・シーハンというプロミュージシャンが手伝ってくれる、と紹介してくれた。
 
「トーマスさんが”この事を記録しようと思ってるんだが”とおっしゃったんです。その時、これが全部女性の話なので、もし女性がギターを弾いたらカッコイイだろうな、と思いました。このアイデアはどんどんいい方に発展して、大きなプロジェクトになる気がしました。。案の定、彼はアイデアを支持してくれました。伝統的男性支配の職場で女性が勝る、という話を音楽で私が擁護します。」
 
ジョン・トーマスの本につけられる新しいCDでは、戦時中人気のあった歌をローレン・シーハンが演奏している。各曲、異なるギブソンギターで演奏されていて、一曲を披露してくれた。
 
ローレンは歌の録音を終えると、修復済みギブソンギターを自分用に一本購入した。
アメリカの音楽遺産だから、そのひとかけらでも手にしたい、と彼女は語る。

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アメリカ史上、この時期に工場で働いた女性たちを英雄視した呼び名、
Rosie The Riveter を思い出しました。次の絵は特に有名な「リベット工」ロージーです。




実際の写真