2022年8月3日水曜日

ウクライナ:強い意志の文化

数年前にウクライナ映画「スニッファー」について書いた。 あれから世界は変わった。 21世紀は、戦争などない世紀になっていくと期待していたけれど。 今年2月24日ロシアがウクライナ侵略開始してから5カ月以上たった。 戦火のウクライナだが、「スニッファー」を配信しているウクライナのサイトは、 2月21日の更新を最後に更新が停止している。 しかし、ウクライナの映画やテレビ番組などの情報配信サイトは無傷で、 「スニッファー」8話を今も視聴できる。 爆撃された廃墟の中で、ウクライナの人たちは音楽やバレー、そして何よりも 日常生活を普通に営んでいる。 「生きる」意志に満ちた強固な文化を持った人たちだ。

2017年1月29日日曜日

アニメ: 元祖ディズニー(ピクサー)強し、追随する西欧アニメ


年が明け、「スニッファー」のことは忘却の彼方に。

このところなぜか、重厚なロシア映画ばかり見ています。
(さては、はまってしまったのか…?すぐ飽きるくせが災いして…)
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飽きる癖:

旧作80円也のGEOビデオ。
ヒヤリングのメンテなどと意味不明な言い訳で、早寝早起きの家族のイヤミをかわし、毎夜夜更かし。

ドラマもアクションもホラーもコメディも、さすがに飽きがきて、ほぼ未経験ジャンルのアニメに。

印象に残ったのは:

・「スペースドッグ」(2010年ロシアアニメ:ソ連時代、世界初の宇宙飛行をしたライカ犬が主人公)
・「ロビンソン・クルーソー」(2016年フランス・ベルギー合作:ダニエル・デフォー原作の名作)
・「ミトン:子猫のミーシャ」(1963年ソ連:ロマン・カチャーノフ監督の人形アニメ短編)
・「ズートピア」(モーションキャプチャで動きが超リアル。リピートしたいハイレベルのエンタメ作品)
・「ジャングルブック」(本物の人間一人を除き全編CG映像で、アニメというにはリアルすぎですが、GEOの区分ではアニメに分類されていました。)

毎回何か新しいものを感じるのは、やはりディズニー・ピクサーでしょうか。常にオリジナル性を追求する執念には、特典映像を見るたびにため息がでます。

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さて、アニメ熱はだんだん適温にまで下がってきました。(見続けています)


アニメと関係ありませんが…

今月は立て続けに、アンドレイ・ズヴィギャンツェフ監督作品を見ました。

字幕があってもなくても強烈に入ってくる、重厚な絵、色彩、カメラワーク、そしてあらすじ。
解釈は観客の手に…。

見ているうちに、引き潮のような力強さで引き込まれ、想像力を掻き立てられている、そんな作品群です。

2002年まで、演技者を目指して目がでなかった貧しい彼。生活のためにCMなどを手掛けていたことから、その才能に気づいた人たちがいて、長編映画を一本、ほんの思い出作りか遊び感覚で作いいから作ろう、と持ち掛けました。そしてそれが。
処女作「父帰る」、ベネチア映画祭「金獅子賞」受賞。

2016年10月28日金曜日

ウクライナ映画「スニッファー」

NHKで先週土曜日(2016年10月22日)から放送開始になった、という

土曜ドラマ 「スニッファー:嗅覚捜査官」

先週土曜の初回を見逃したので、明日の2回目を見てみようと思います。
実は、オリジナルを先に見ているので、両者を比べるのも楽しみです。

1年ぶりのブログ投稿は、こちらのオリジナル作品について…

◆まえおき:
出会いは本当に偶然。
夜中のYoutubeサーフィン中にロシア映画の新作「ウチルカ(女性の先生)」を見つけました。かつて「貴族の巣」で初々しくデビューされた美しいイリーナ・クプチェンコさんが老境に入られ、主演されている映画で、これを見つけたのがまず発端です。

話は現代。老教師が毎日騒々しいデジタル自己中世代のワルガキたちを、この日は拳銃で脅して課題をやらせる、という緊迫感満載の展開。

半ば眠りながら見終えたころ、Youtube 画面上で次の映画が始まりました。
なんとなく見ていたら引き込まれ、映画は明け方終わりました。映画はミニシリーズの集大成らしく3時間以上あって、映画の題名(オープニングがカットされていた)もまだ判明しませんが、とにかく。
主演俳優のキリール・キャロ(1975年2月24日エストニア、タリン市生まれ。顔は米俳優のティム・ロス似、長身。)が強く印象に残りました。
彼の他の作品を見たくなり、探していると「スニッファー」をYoutube 上で見つけました。

◆ウクライナ製海外クライムドラマ「スニッファー」:
「The Sniffer」(原語はロシア語で”ニューハッチ”)
ウクライナの総合映像メディアグループ、Film UAが制作している大人気番組で、受賞多数、世界60か国でリメイクや放映が行われる、ヒット作品です。


◆オリジナル性が光る、西欧タイプのドラマ仕立て
これまでの旧共産圏映画のステレオタイプの臭いを予感していた私はびっくり、この作品の虜になりました。
ずっと米欧の海外ドラマを頻繁に見ておりますが、そうした(世界基準ともいえる)1時間ドラマ枠にピッタリ寄り添い、ユニークな(突飛な)設定を散りばめて、しかもオリジナル性・娯楽性の高い仕上がりになっていて、見る人をひきつける展開に感心しました。

◆名前も背景も不明、謎だらけの主人公:
主人公は豪華な建物の駐車場スペースを赤いクライスラーの高級車Dodge Challenger 1台で独占。建物に他の住人がいる気配はなく、超スペーシーなフラットに一人で住む。
15年前に何かの間違いでか女性(ユリア)を妊娠させたせいで一人息子アレックスがいる。息子は母親と住んでいるが、支配志向の強い女性ユリアは思春期の息子と対立。この二人が犯罪捜査の最中や合間にしばしばからみ、問題を持ち込んでくる。そのたびに父親として息子に向き合おうとする主人公。しかし、ユリアには、指一本触れる事さえためらう。(いったいどんな関係なの?!)

◆謎を抱えるのは主人公だけではない:
家族問題に加え、アレルギーをかかえ、しばしば嗅覚捜査に支障をきたす…
相棒ビクトル(連邦捜査官)から紹介された有能な耳鼻科医師、この方があらゆる意味で美女です。本当に美しい方です。主人公は彼女に次第に惹かれるのですが、この女性も秘密を抱えています。いわば、登場人物たちみんながそれぞれ謎を秘めていて…。
謎が謎を呼ぶ、謎のオンパレード映画ゆえ、どうしても「次に行こうか!」と続きを見たくなります。

あんまりおもしろいので一気に1シーズンの最初の4本を見た翌日、NHKでリメイク版の放映が始まったのを知った次第です。
すでにNHKエンタープライズからDVDもリリースされているそうです。
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◆オリジナルDVDリリース
制作元のFilm UAではこの作品について、第2シーズンまでの全エピソードを英語字幕付きの高画質で公開しています。また物語の設定や登場人物の性格・背景などの説明もあり、英語の分かる方ならGEO店頭のDVDを待たずにこのサイトで十分楽しめます。

なおNHKエンタープライズ発売のDVDですが、アマゾンレビューによると、ローカライズ(この場合字幕翻訳)が不十分でドラマの内容を十分に楽しめなかったようです。

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GEOから借りたビデオ6本、好きな海外ドラマの録画には目もくれず、すっかりはまってしまった3日間でした。

2015年10月13日火曜日

年末に第九を歌う

フィドルにはまってから、すっかり歌うことから遠ざかっていました。

結構長く楽しんだアカペラでは、「和音」の奥深い世界に分け入り、
やがて楽しみはフィドルのダブルストップになり、すっかり楽器党になりました。
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しかし、私の音楽仲間はみな歌が好きです。
合唱団を3-4も掛け持ちしている友人が複数います。

そして、晩秋もせまり、年の瀬が近づいてくると、みんなベートーベンの第九だけを歌うための、募集で集まった大人数の合唱団の練習へいそいそでかけます。
そして年末の本番で、何百人、中には千人以上の大所帯で、ドイツ語で高らかに歌い上げます。
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第九の練習シーズンが来たなあ…と思っていたら地元の市報に「第九を歌おう」の募集。
10月半ばから、全5回の練習で本番は12月半ば。
おそるおそる問い合わせてみました。募集人員は300名とありましたが、現在100名弱とのこと。

試してみよう…第九

2015年3月20日金曜日

Carl Hammig の作品

フィドル・セッション会は今回も盛況でした。
フィドラーが20数名も集まると壮観です。ほかにもマンドリンやギターで参加した方、そしてバッキングバンドと、体温だけでも熱気あふれるセッションでした。

伴奏ブルグラバンドはやる気満々で待機して下さり、私は二胡の友人とAmazing Grace を二重奏しました。二胡はバイオリンと音色がマッチしてアンサンブルに向いている、と主催者の方の感想です。

フィドルでは Flower of Mexico をソロ演奏しました。速弾きの曲で、Bメロ部分はまだ指がもつれそうで、演奏途中ストップしそうなので、伴奏を辞退したのですが、バンドさんが「大丈夫」「だいじょうぶ」と嬉しそうな笑顔でおっしゃるので、そのままGo!あとの記憶はどこかへ。
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さて、この日使った、Hammigバイオリンの話をまた続けましょう。

Carl Hammig については、ドイツの複数の旧いバイオリンメーカーブックのリストで、Meister、バイオリン製作者に関する英文サイトでもCraftsmanship とあります。

Carl H. Hammig が製作した楽器はアメリカのカーティス音楽学校(ペンシルベニア州フィラデルフィア)のコレクションに2本あることが分かっています

1932年に製作したビオラが、現在、ドイツのオンライン楽器販売に出品されています
こちらは、掲載写真のネックの上駒部分に修理跡の様なものがくっきり。ペグボックスがネック部分でポッキリ折れたかのようで、最初見るとはっとします。
そんな事故は、普通では考えにくいので、単に写真の光線の具合のせいかもしれませんが。

私の楽器もC部分のパフリング交差部の角が黒い焦げ色をしていて、先端が欠けています。初心者の弓ですり減ったとすると、上達はしなかったようです。
一枚板の裏板は表板と微妙に形がずれていますが、ニスのはがれ方が同じなので、経年変化のせいでしょう。
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ドレスデンは第二次大戦中の1945年、2月13~15日の間に、連合軍による4度にわたる大規模な空からの無差別爆撃を受け、市の85%が破壊され、数万から数十万の犠牲者を出したといいます。

楽器の損傷はこの空爆と関係あるでしょうか。
Carl Hammigもまたこの年に空爆を経験したのでしょうか。

彼はいつどのように亡くなったのでしょうか。(諸説:生年は1877年と1889年、没年は不明または1932~1945とする説があります。)


ドイツ製バイオリンは、19世紀末から20世紀初頭までの間、年間数10万本のバイオリンがアメリカに輸出され、ドイツの主要輸出品目かつ外貨稼ぎの筆頭でした。
同時期にバイオリン製作を行っていたHammigは、どんな人だったのでしょう。



2015年2月13日金曜日

フィドルセッション、ときどきf 字孔

毎年フィドル好きが集まるセッション会に今年も参加します。
参加者は必ず1曲、バンドさんのバッキングで演奏披露することになっています。
参加楽器、ジャンルはなんでもありのオープンな集まりですが、
これまでのところ、アイリッシュとカントリー系が主流です。

今年は二胡の友人を誘ってアンサンブルとソロ演奏を計画しています。
そして、私の楽器はHammig です。
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Hammigの楽器に出会ってからは、お宝バイオリン探しはとんとなくなりました。
これまで鳴らしたフルサイズ5本のどれもかなわないほどよく鳴るからです。

魂柱が通常より高いせいでしょうか、構えて右側の f 字孔の段差が左側より大きいです。
偶然こうなったのか、意図的に右側(音を飛ばしたい方向)の f 字孔を拡げたのか、
段差のある理由は分かりません。

これと同じ作り方をした(?)バイオリンを見たことがあります。
Gibsons製というバイオリン(写真:以前知人から預かり、クリーニングとチューニングをしてお返しした楽器)です。

このふたつの楽器はともに、際立つ大きな音が出ていました。
とはいえ、いわゆる「傍鳴り」かもしれません。
広いスタジオで、マイクと楽器の間に距離を置いて、Hammigの音を録音してみました。ほかの楽器に比べ、やはり大きな音がでています。
Hammigは低音部に深みがあります。しかし、高音部は、イタリアンのような明るい音ではなく、暗い響きがあります。
でも、これらは弦や駒、弓を変えると微妙に違ってきそうです。

音量を求める職人たちの中にはさまざまな工夫を行う人たちがいますが、f 字孔の段差もそうした工夫のひとつなのかもしれません。
自分も職人なら、やっているはずですから、そう思えてきます。


2014年12月15日月曜日

Carl H. Hammigのバイオリンを弾いた人たち

先月はオカリナさんたちの発表会のゲスト出演で、
Hammigのバイオリンを初めて披露しました。
入念に練習を重ねましたが、本番では緊張、
でもなんとか無事に終えました。

数日後には介護施設での演奏が待っています。
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Carl Hammig が製作したバイオリン。
彼の作品を手にしたのはどんな人たちでしょう…
つれづれに情報を追ってみました。

1889年創刊の弦楽器専門誌 The Strad、2011年4月号
Phillip Kass 著の記事にこんな記載がありました。
「Carl Hammig のバイオリンを弾く人にはすぐれた音楽家が多数おり、なかでも著名なのは、バイオリニストで優れた指導者でもあったLeopold Auer だ。彼が渡米し、フィラデルフィアのCurtis Institute of Musicで教鞭をとるようになった際、Carl H. Hammigのバイオリンを持参した。そのため、同校はCarl Hammigのバイオリンを2本入手し、コレクションに加えた。」

レオポルド・アウアー(1845~1930)はハンガリー出身のバイオリニストです。中でもジョーゼフ・ヨアキムに師事した時から、ドイツ音楽の影響を大きく受けました。その弟子には沢山の著名なバイオリニストを輩出しています。エフレム・ジムバリストやヤッシャ・ハイフェッツもそのひとりです。

オーストリア治下のハンガリーで、貧しいけれど腕のいい家具職人の父のもとに生まれ、幼少から音楽の才能を見せ、音楽学校に入学しました。学費や生活費を稼ぐために苦労し、最初はフランスをめざし、その後彼の才能を見抜いた有力者に勧められロシアで活躍しました。
ロシアでは厚遇され、名誉を与えられ、40年以上を演奏と指導にあたりましたが、齢70過ぎにして、激動のロシア革命を逃れ、アメリカへと移住を余儀なくされました。アメリカでは自分のかつての弟子たちが活躍しており、彼を温かく迎えてくれ、生涯をバイオリニストの指導にあたりました。

ところで。
アウアーは晩年、ドイツに行き、ドレスデン郊外の風光明媚なロシュヴィッツ(モーツァルトや詩人ゲーテなども滞在し当時の高級避暑地)で客死し、ニューヨーク州のフェンクリフ墓地に埋葬されました。

Carl H. Hammigのバイオリンを弾くアウアーがCarl H. Hammigのいるドレスデンにやってきたのは、何のためだったのでしょうか?避暑観光の他にも用があったのでは、と想像の翼が羽を拡げます。