2010年7月10日土曜日

ピアニズムというメソッド

インパクトのある本に出会いました。
浦和美園のイオン店内書店で、棚の大型本たちに埋もれていながら、妙に輝くうすい背表紙に吸い寄せられました。
『ピアニストへの基礎:ピアノの詩人になるために』(田村安佐子著、筑摩書房、1990年初版、2009年第17刷)
内容は、ピアノ演奏の真髄を美しい音と詩的な表現に置き、どんな超絶技巧も基本的な演奏アプローチのための身体と心造りなしに成り立たないことを説いています。脱力と無駄の無い最小限の動き、背骨と腰で支えるゆるぎない身体の芯の維持の大切さ。

心惹かれたのは、手のことです。
私の手は小さく、1オクターブも届きません。鍵盤の手前から押さえてようやく鳴らせますが、演奏には使えません。しかし、この本は、
◆手が小さいからといって諦めてはいけない。毎日、手を開く練習をし、手をマッサージしなさい。どんな年齢の人も確実に指が開くようになる。
と。
このメソッドを確立したマグダ・タリアフェロは90歳を過ぎるまで、元気に教育や演奏活動をしていました。彼女が自分自身の経験を長い時間をかけて分析し、生徒に伝えていったのがこのメソッドです。


pianism: The technique or execution of piano playing (by American Heritage Dictionary of English Language)

私は色々な楽器を手にするたびに、ある共通したことが心に浮かびます。それは、初めてバンドに参加して、そこで門前の小僧よろしく覚えたことです。

音楽は心を奏でるもの、力を抜き、イメージをうかべ、聞こえてくるみんなの奏でる音とリズムに乗り、あとは流れに身を任せる・・・そういったことでした。

バンドで教わったことも、のちに参加したアカペラで教わっていることも、このピアニズムの本が言っていることと少しも違っていません。私は、意識せずに最良の先生たちを選んでいたことに、今気づきました。これが自分の行きたい道だったのだ、と。

このところ、自分が変わっていくのを感じています。多分、音楽の師に恵まれた幸運を強く感謝している気持ちのせいでしょう。クラシックの教育を受けたプロでいて高校の同窓生のような仲間意識で向上を求め続ける歌の先生、独力で驚異的な造詣の深さと技術・完成を身につけたギターの先生はともに、「音楽」というマジックをかける魔法使いのようです。6年前に「音楽」の魔法にかけられ、以来それは解かれることなく、ある種の推進力になっています。

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アコーディオンを弾くと、蛇腹の呼吸が音を作り出す、その吐息が振動となって身体に伝わってきます。この本を読んで、初めてこの楽器の音を身体全体で感じられたような気がします。

ギターを爪弾くと、6本の絃のひとつひとつが、聞こえてきます。今までと違います。どうしてこうした違いが生まれるのか不思議です。

今日から、手をマッサージし、呼吸を整えて、ふりこ体操をしてから、楽器たちに向かうことにしました。