2012年2月29日水曜日

楽器対決 : あのbanjo boy - Billy Reddenさんだ!

映画の中に出てくる楽器はどれも気になります。

最近、CSで放映した ティム・バートン監督の「Big Fish」(2003)には、主人公が訪れる理想郷スペクターで、彼を迎える村人の中に、バンジョーを抱えた男性のショットがありました。なにやら見覚えのある顔です。・・・あのbanjo boyのBilly Reddenさんでは?

Big Fish出演のBilly Redden
ゲオの80円DVDを借りまくって見ていた頃に見た「脱出」(Deliverance, 1972、ジョン・ブアマン監督)という作品。
冒険を求めて川下りをしよう、と山深くに入った男性四人の冒険が、排他的な地元民への懐疑と恐怖から暴力的逃避行に一変するスリラー仕立ての映画です。
話が始まってまもなく、主人公4人の一人、ロニー・コックスが村で、バンジョーを抱いた少年に気付き、ギターでブルーグラスのフレーズ (曲は「Dueling Banjos」)を奏でます。
少年は、そのギターにバンジョーで応じます。閉鎖的な村は、近親結婚も多く、このバンジョー少年もそれを思わせる風貌をしており、
DeliveranceのBilly Redden
知恵遅れです。

この場面は、あまりに強烈で忘れられないシーンでした。
ギターとバンジョーのかけあいは、やがて素晴らしいショートセッションに。
しかし。
演奏を終えて、握手を求めるギタリストの手を少年は無視します。雰囲気は一変。
4人は地元民と仲良くやるつもりでしたが、相手はそれを望まなかった・・・。
この場面は、そのあとの展開を暗示する、ある意味で重要な「テーマ」部分になっています。

そういえば、私の映画好き兄弟たちがカルト作品に祭り上げていた映画の一つだったのを思い出しました。暴力シーンがハードで、同じ川下りモノなら、メリル・ストリープ主演の「激流」のほうがマシに思えましたが、あのBanjo Duelの場面は、ぜひもう一度見てみたくなりました。

ゲオには行かず、Youtube で見ました。
ジョージアの田舎のさらに奥・・・ 大自然に抱かれた山間の澄んだ空気。
だのに、住民たちが醸し出す、なんとも言えない、よどんだ空気感。

バンジョーvsギター対決・・・・
う~ん、やっぱりすごい。

◆映画「脱出」は、2008年にアメリカ議会図書館により、「文化的、歴史的、美学的に重要」な映画、として全米保存映画リスト登録されました。(Wiki) やはり、「カルト映画」です。
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◆Banjo BoyのBanjo Duel場面
http://www.youtube.com/watch?v=myhnAZFR1po

◆2003年New Yorker 記事:Billy Reddenが"Big Fish"に出演した経緯について
http://www.newyorker.com/archive/2003/11/17/031117ta_talk_friend

◆バンジョーボーイのビリーは、ロケ地の地元学校で監督に見出されたキャストでした。撮影当時15歳。
設定は近親結婚による遺伝子異常を抱えた子供です。深南部っぽい雰囲気を出すため、そのメーキャップが、さらにその設定をリアルにしています。
ビリーはこれ一作に出たきりでしたが、対決場面があまりに強烈だったため、アメリカ映画関係者やファンの間では、banjo boyとしてほぼ永遠に?その名を残しました。
Big Fishの監督ティム・バートンはどうしても彼を理想郷のバンジョー弾き村人として出したかったため、金や太鼓で探し回ったそうです。ジョージアの片田舎でコックと皿洗いをしていた彼を発見、ためらう彼を拝み倒して映画に。
ビリーは子供の時の撮影時に接した出演者のバート・レイノルズについて、不満を述べていますが、バートン監督については好意的コメントを述べています。(Wiki、The New Yorker)

◆ビリーは全くバンジョーを弾けません。簡単な指使いも覚えられなかったそうです。そんなわけですから、
バンジョーvsギター対決の場面。バンジョーのフレットに触れている彼の左手は別人のもの(現地のバンジョー奏者、Mike Addisの左手)です。
完璧な撮影アングル。カメラワークは名人芸。(Wiki)

◆この時演奏された曲は、"Dueling Banjos"。1974年、カントリー演奏部門でグラミー賞を受賞しました。作曲者Arthur Smithに無断で曲を映画に使用したため、訴訟に持ち込まれましたが、おかげでこの曲は大変有名になりました。(Wiki)