2011年1月5日水曜日

ロマ音楽: テンポにも音価にもこだわらない自由なリズム

ロマ音楽の豊かな情緒性、自由な表現にはとても惹かれます。
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数年前に、アカペラコーラスを始めてから、レパートリーのハンガリー音楽にジプシー調音楽の香りを強く感じるようになりました。その香りが気になり、たどるうちにロマ音楽に出会いました。

現在アカペラで歌っているハンガリー作曲家の作品には変拍子めまぐるしいものが少なくなく("Tel" :冬、など)、ロマの自由な生き方→感じる心のままにテンポや音価が変化→楽譜のようなものには縛られない・・・といった魅力にあふれているからです。(我がアカペラでは、その自由は指揮者のものですが)。

ジプシーと呼ばれてきたロマ族が放浪の民であるせいでしょうか、その音楽には、様々な異文化の影響も見て取れます。
Klezmer(東欧ユダヤ系の音楽ジャンル)音階の曲もあります。また、ギリシャの影響でしょうか、7/8拍子の曲もあり、これは1-2-3,1-2,1-2と数えると拍子をとりやすいです。

とりよせた本『ジプシー・バイオリン』(メアリー・アン・ハーバー著)によりますと:
「ジプシーのバイオリニストたちは、旅を通して東欧や中東の音楽イディオム(音楽的単語の連結による表意、とでもいいますか・・・)を同化してきた。」

のだそうです。なーるほど~♪

でも今、ロマ族は窮地に立たされているようです。
昨年初冬のTime誌にはイタリアで強制退去させられるロマ族の人たちの記事が載っていました。ちょうどフランスでも同様の動きが高まり、EU諸国に派生しつつあるようでした。ロマ族の人たちは、その生活スタイルを変えず、排他的であることから、行った先々で排斥されるようです(昔ですが、そうやってアメリカに移民した人たちの中には、チャップリンやボブ・ホスキンスといった、ハリウッドで名を成した人たちもいます)。

今朝のTVでは、琴と尺八を弾くアメリカ人デュオを紹介していました。
二人は20数年前に、それぞれ和楽器に惹かれて来日。現在では日本人に教えています。彼らいわく、「琴と尺八は、日本の風土に実にあっています。日本人はもっと子供たちに和楽器を教えるべきです。」
インタビュアーもたじたじのコメントでした。
沢山の日本人が、彼らの演奏に感動して聞き入っている様子が印象的でした。

変化が加速度を増すこのごろ、
ロマ音楽も、急速にこの流れに飲み込まれていくのでしょう・・・か・・・
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蛇足:

◆フィドルとバイオリンの違い:
ところで、フィドルはバイオリンと同違うの?とよく言われます。
楽器は同じものですが、演奏スタイルが違う、とでも言いましょうか・・・
ガルネリでもストラディバリでも、庄司沙矢香さんが弾けば、バイオリン。
Natalie McMaster(Scottish fiddler)が弾けばフィドル、といった具合です。

◆ロマ族:
ロマ族はジプシーと呼ばれることが多いのですが、これはロマ族がエジプト人と思われたことから発祥した呼称です。定住せず移動する民族でも、ロマ族は遊牧民と異なり、音楽やダンス、占いなどで生計を立て、独特の文化を作り出した民族。定住しても地域に溶け込まず、その排他性が問題視され、現在、ヨーロッパ各地で排斥運動が表面化しています。